瀬戸内国際芸術祭2:現役の国立ハンセン病療養所・大島青松園

瀬戸内の島巡り、二島目は大島です。大島は島全体がハンセン病の国立療養所になっていて、これまでは関係者以外立ち入り禁止でしたが、瀬戸内国際芸術祭をきっかけに見学が開放されています。
そもそも国立ハンセン病療養所は明治40年に制定されたらい予防法に基づいて設立されたものですが、らい予防法は平成8年に廃止になっており、本来の役割を終えているにも関わらず、施設はいまだに存続しています。



今回、ガイドツアーに参加して、島内の施設や歴史について色々と話を聞いたのですが、そもそもハンセン病はとっくの昔に治療法は確立されていて、療養も何もなかったのですが、根強く差別は残っていて、むしろ隔離施設としての性格が強かったようです。
現在も続く国立ハンセン病療養所
今も入所されている方々もハンセン病は全員完治していて、現在の療養所はハンセン病というよりはお年寄りのための診療所として存続しているようです。
とはいえ、明らかに普通の島とは様相が異なり、例えば、ハンセン病の後遺症で目が不自由な方が多いため、現在地を伝えるための音楽が常時流れていたり、はっきり道を識別するために白い線が引かれていたりと、現在も入所者のためだけの島であることがわかります。
また、島内の写真撮影はOKだけど、入所者の方の写真を撮ることはNGというルールもありました。

さらに、高松から大島に渡る船は「官有船」となっていて、商用ではなく国立の療養所に行くための船なので無料です。そのため、事前に予約ができず、当日出港時間が近くなったら、船着場に行って勝手に乗るという方式になっています。ハイシーズンの混雑時は不安でしたが、夏休み期間でもせいぜい70%ぐらいの乗船率でした。
隔離されてきた静かな空間
そんな大変レアな島ですが、島の風景は松林と砂浜が美しく、とにかく静かで不思議な空間でした。イメージとしては、「火垂るの墓」で登場する西宮の海水浴場のような感じでしょうか。明治42年に国立療養所が建設されて以来、商業的な開発が入っていないこともあり、戦前の雰囲気が残っているのかもしれません。



一方、平成8年に元々の役割は終えているはずですが、島内の建物は新しいものが多く、人はほとんどいないのに人工的な建物が整然と並んでいるという、ある種シュールというか、他ではあまり見られない独特の景観も特徴的です。
負の歴史にちなんだアート作品
瀬戸内国際芸術祭の作品展示は、主にかつて使われていた古い生活棟が利用されていました。(現在の入所者の方々は別の建物で生活されています)
基本的に国立療養所とハンセン病にちなんだもので、他の島のアート作品とは異なり、社会的メッセージを前面に出したもの。正直、アート作品としてはどうなのか微妙な感はありましたが、この場所でこの作品という意味を感じる展示でした。




サンフランシスコのアルカトラズ島とも似ていて、高松のビル群が肉眼で見える距離なのに、島を出ることができないかつての入所者の思い。そして、今もわずかに残る入所者の方々のために新しい建物が整然と作られた不条理な景観。
普段は全く意識してなかった負の歴史が、現在進行形で続いていることを強く感じさせられる体験でした。
そして、ここから大島→男木島というマニアックな航路の高速船で男木島に移動しました。
釣り船を少し大きくしたぐらい船で、大島にはチケットオフィスもないので、運賃は乗ってから回収係のお兄さんがお金を集めて回るというアットホームなシステムでした。
